プレミアム・シネマ

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 そのことが、どうしても彼との間に壁を感じさせる。彼はそんなことは全く気にしていないかのように、無邪気に俺をベッドに誘ってくれるけど。  彼との壁は、そんなランクの違いだけじゃない。  彼には、歴とした恋人がいる。詳しく聞いたことはないけれど、彼の自宅に行けば、その存在はそこかしこに色濃く漂っているし、彼はそれを隠さない。  何度シーツの狭間に引き込まれても、ハブラシも、スリッパも、バスタオルも、いつまで経っても姿を消さない。 「どこの映画館なんすか?」  駅を出て、彼の後ろをついて歩きながら尋ねる。彼は俺の半歩前を、踊るような足取りで楽しそうに歩いている。 「チネフォッラ。行ったことある?」 「聞いたことないっすね」  全国展開をしているようなシネマコンプレックスではないみたいだ。それ以外の映画館には行ったことがない。どんなところなのか、想像も出来ない。 「そっか。小さい映画館なんだよ。ライブ会場で言えば、ライブハウスみたいな」 「へぇ、そんなとこあるんすか」 「ミニシアターって言ってね。アジアとか東欧とかのアーティスティックなのやってるとこが多いんだけど」
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