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心底そう思ってるんだろう。何の屈託もなくそう言う。
「ティファニーで朝食を、って知ってる?」
「知りません」
「そっか! 今から見に行くのはそれ」
何だかちぐはぐなタイトルだ。不思議な語感。
「ティファニーって、人の名前ですか?」
「違うよー。ほら、ジュエリーブランド。オープンハートとか」
俺は首を傾げる。ジュエリーには縁がないし、俺が好きなアクセサリーブランドはロンワンズくらいだ。
「知らない?」
「はい」
「んー、そっか。ニューヨークのそのお店で、朝ごはんが食べたいなって話」
「どんな話なんすか、それ」
どうして宝石屋で朝飯を食べる展開になるのか、俺には想像出来ない。
「まぁ、見てみてよ」
足を止めた彼は、くるりと俺の方に向く。
「ここ!」
言われてその建物を見ると、雑居ビルの1階にポスターがいくつか貼りだされていて、小さなチケット窓口がある。狭い戸口の上にはCineFollaと書いてある。
ポスターの中では、黒いドレスの綺麗な女性が、悪戯っぽい表情で微笑んでいた。
「これ、似てますね」
「んー?」
彼は首を傾げてポスターを覗き込む。
「俺に?」
「はい。何となく」
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