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「随分、遠くまで来たな.....」
「銀河系が遥か彼方だ」
傍らの同僚達が呟きを漏らすなか、俺は深い紫色の闇の中に点々と星々が輝きを放つ様をじっと見つめていた。
「そう言えばイタル、身体の具合はどうだ?」
「大丈夫だ。船医の先生にも特に異常はないと言われている」
「そうか′....それならいいが」
手短かに答える俺に同僚は躊躇いがちに頷いた。
俺の名前は八雲イタル。......地球名だが。俺は俺を産んだ人と宇宙空間を漂っている時に銀河系惑星連合艦隊の軍人だった父によってこの巡視船『NAGI 』に救助された。俺を産んだ人が亡くなった後、俺は八雲ツカサの息子になり、地球で育った。名前も育ての父だったツカサが着けてくれたものだ。
同僚達が俺を気遣うのには理由がある。俺は天の川銀河の星の生まれではないからだ。天の川銀河には幾つかの星雲があり、知的生命体の生息する星も少なくない。その星系の環境が似通っていれば、他の星のヒューマノイドと婚姻関係を結ぶことも珍しくはなく、様々な星のミックスが増えて、その容姿・能力も様々だ。
だが、天の川銀河の外の星に関しては、まだ情報も少なく、銀河系惑星連合のマザーシステムとも言えるスーパーコンピューターに問いかけても、俺を産んだ人の母星『エテルナ』に関しては未知の部分がほとんどだった。
まず俺を産んだという人は、とても美しいヒューマノイドだったが、不思議なことに外見上は、地球人のいわゆる『男性』だった。生殖器もあったが、胎内に俺を宿したというなら、女性でもあったのだろう。
そして俺にとって一番衝撃だったのは、『エテルナ』は銀河系惑星連合の記録では、惑星『ラディアン』の植民地になっていることだ。
もっともM87の知的生命体の存在する星の全てが『ラディアン』の支配下にあるらしい。ー幾つあるかは不明だが、そのうちのひとつ『タルボット』からのSOS が惑星連合に入った。
俺達の任務はその周辺の確認、いわば斥候だった。父、ツカサの船でもあり、俺は当然志願した。
そして俺達は天の川銀河を抜けた。
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