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「ついてこい」  ホログラフィーの映像で拘束された乗組員達の姿を見せられたナシルや俺達に抵抗の余地は無かった。  ラディアン上空の巨大な空中都市......それがそのまま異星人用の監獄(プリズン)だと知った時には愕然として言葉が無かった。  その一区画の中に、『NAGI 』 の乗組員達はA I とアンドロイドの監視のもとに収容されていた。首に着けられたタグは無断でその領域から脱走しようとした時点で爆発する......と脅されればおとなしくしているほかは無い。  しかも全く外界の見えない室内からは、脱走した先が宇宙空間であることなど、想定することも不可能だ。 『それ以前に区画ごとに、その生命体に適した空調、エネルギーフィールドになっている。お前達の星の大気に近い区画が他にあるとは限らない』  つまりは、下手に逃げ出して余所の区画に迷い込めば、その時点で死を招くこともある.....というわけだ。  俺達は、艦船ごと巨大な宇宙船に収用された。  俺と艦長のナシル、Dr. T.E、それと航海長のオリオナエのタジンは、他の乗組員とは別に小さな着陸用の宇宙船に乗せられた。  そして、首に小さなボックスの付いたチョーカーのようなものを装着させられた。これは極小のエネルギーフィールド生成装置で、装着している生命体の周囲、半径五十センチの範囲内をその生命体に適した空間に設定するもので、『ライフ-コクーン』と呼ばれるらしい。 『我々が何処の星の生命体かわかるのか?』  Dr.T.Eが第三の目をしばたたきながら言うと、俺達を連行している保安部隊のリーダーらしき男がニヤリと口元を歪めた。 『マゼラニアン風情が我々の科学技術を舐めるな。もっとも......』  そいつは俺を指差して言った。 『そこのガキにはそれは本来、必要の無いものかもしれんがな』  そう、単なる一等航海士に過ぎない俺が、船長達とともに上陸を要求されたのには理由があった。  それは俺が身につけていた、俺を産んだ人の形見のチョーカーにあった。  ラディアンの保安部隊が艦内に侵攻してきた時、恥ずかしいことに発熱していた俺は治療のため、医務室のベッドにいた。 『来い!』  ラディアンの兵士達に引き摺りだされ、隊長らしき男の前に立たされた時、チラリとそれが検査衣の襟から覗いた。そして、俺の襟を開き薄紫の石の嵌め込まれた其れを凝視して、隊長が眼を見開いた。  そして、俺も上陸するように命じた。 『その子は体調を崩している。乱暴にしないでくれ』  俺を引き摺っていこうとする兵士達をDr.T.Eが サイ・エネルギーで制した。 『わかった。お前も同行するがいい』  隊長はチッと軽く舌打ちをして、俺がDr.T.Eの肩を借りることを許した。  ドクターは、俺を支えながら、周囲に聴こえないよう、小さな声で囁いた。 『お前は地球人だ。両親とも、な』  首を巡らせると、ナシル船長が小さく頷いていた。 『はい』  俺は、彼らの指示に従うことにした。少なくとも、俺の父親は地球人だ。俺は地球人の宇宙船(ふな) 乗り、八雲ツカサの息子だ。  俺の中では、その事は何よりの『真実』だった。  
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