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 着陸用の小型のエア・シップが静かに降りたのは高層ビルの建ち並ぶ都市...ではなく、岩礁と森林に囲まれた草原のような場所だった。勿論、その地表ではなく、岩礁に設えられたエア・シップの格納庫だったが......。牧歌的なその大地の横腹が音も無く開き、エア・シップを次々と呑み込んでいく様はなかなかにシュールだった。  格納庫から続くステーションは広大なもので、俺達は幾つものエレベーターと通路を経て、ラディアンの中枢らしい場所に辿り着いた。  そこで俺達が知ったのは、ラディアンの住民の多くが地下都市に住み、地表に存在する建造物群はラディアン帝国の皇帝と一握りの支配層のみが使用することの出来る特別な領域(エリア)だということだ。  実はラディアンの大気には放射性物質が大量に含まれており、シールドに覆われた一定の領域(エリア)以外の地表は生命体の生存に深刻な影響を与える......のだそうだ。故に人々は放射性物質の影響の及ばない地中に生存領域を求めるようになった.....という。  もっとも保安部隊の隊長によれば、 ー三万年前に近接した星間領域で超新星爆発が起きたことで惑星環境が変わってしまったためー なのだそうだ。 『M87星雲の惑星の多くがこの爆発によってなんらかの影響を受けている。エテルナもタルボットもな』  それがどういう意味なのかは、隊長はそれ以上口にはしなかった。    俺達は、ゴシック調の巨大な教会のような建造物に連れていかれ、地球で言うところの別棟のような建屋で待つように命じられた。  一見、地球の建物と装飾が似通っているため、ここが別の惑星には思えなかった。が、使われている物質は地球のそれのような有機質から出来ているのではなく、人工的な化合物であることは感触から察せられたし、シャンデリアのような灯りの光源もまったく異なるものだった。  熱の下がらない俺は、主治医のDr. T.E に付き添われてラディアンの医師らしき男の診察を受けた。  幸いなことに、俺は『大帝』との謁見まで仮眠を許され、医療用ベッドに身を横たえた。 『マゼランと同じシステムのようだ、心配はいらない』  ドクターが傍らの椅子でほっと息をついて、俺の頭を優しく撫でた。 『私が見守っているよ。安心してお眠み、私達の息子』  俺はドクターの微笑みに小さく笑い返して眼を閉じた。  あの宇宙空間でカプセルを拾った三人...八雲ツカサとナシル、そしてDr. T.E は俺を三人の『息子』として大事に可愛がってくれた。戸籍上の父となった八雲ツカサが惑星連合の地球方面指揮官として太陽系を離れられないぶん、ナシル達が『NAGI 』とともに俺の側で見守ってくれていた。  俺はずっと彼らといたかった。
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