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触発されて
律希は、夢たちが言っていた『Cから始まるABC』をYouTubeで検索して聞いた
こんなにリピドーに訴える曲は聴いたことがなくて、目頭が熱くなった
律希が知る限り、成が好きなのは真仁ただ一人で、つまりは安心しきっていた
なぜなら真仁の好みは、明確に成タイプではないからだ
成は真仁とは結ばれることはない
そうたかをくくっていたし、実際そうなった
律希の分析では、真仁は破滅的で刹那的な女性を好む傾向がある
真仁が夢の前に付き合った二人の女子たちは、どちらも真仁が苦手な【試し行為】を無意識にするタイプではあったが、衝動的、快楽的という意味においては、真仁の好みに合ってはいたのだ
だが、成にはそれがない
成は実直、慎重、現実的
面白味がないと言えばないのだろうが、そんなのは個人の好みであり、律希はそこを起因とする、成の不器用さがたまらなくかわいいと思っていた
もうかわいいかわいいかわいくてたまらない
ノートいっぱいに殴り書きしたこともあった
仲のいいクラスメートにはバレているし、バレた時点で、彼らの前では欲望を垂れ流しにしている
しかし、成には気づかれたくない
できればスマートに近づいて、成に少しずつ意識させて、『あれ?いつの間にか、わたしの隣にはいつも律希がいる…』的な流れを作り、なるべく自然にお付き合いにもっていくのが律希の理想なのだ
しかし、クラスが離れたことにより、その計画は困難を極めた
さらには生徒会の激務
正直、朝のオナニー以外は成のことを忘れきっている
(ごめん、成、それでも俺はお前が好きだよ)
遠くから成を眺めては、心のなかで語りかけていた
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