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ーーまあ今日は緊急事態だから手伝ってもらうけど、余計なことはしないでよ。
社長から仕事の同行許可がもらえたのは、その日ただ一人の社員であるシゲさんがヘルニアの悪化で寝込んでしまい、アルバイトの橘くんと安田さんは都合がつかず、人手が足りなかったからだ。僕は荷物持ち要員として、両肩に重たい機材をぶら下げて、社長について行った。
取材対象は今をときめく業界人ーーではなく、会社経営から半分手を引いて悠々自適な生活を送るIT企業の社長さんだ。社長と言う肩書はあれど、言わせてもらえば、50代の普通のおじさんだ。
朝の散歩に付き合い、出社して会議を見学し、晩酌の共をし……
途中思わぬハプニングに見舞われたり、名言・金言が出たりすることもなく、撮れ高が心配になる一日だった。印象に残っているのは、若くても高い時計を一本は持っておいた方がいいと言う僕へのアドバイスくらいだ。
事務所に帰ってからの編集作業も、黒い画面に白字で印象的なフレーズを写したり、どこか聞き覚えのあるBGMをあてたり、それっぽいナレーションをつけたり、色々と法的にマズいのではないかと気になって仕方がなかった。
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