私からあなたへ歌う歌

酔っ払って帰ってきた日、歌を歌った。
冷たい床にうつ伏せになって、アルコールで火照った頬を冷やしていた。冷やしながら、歌を歌った。さっきまでみんなで歌っていた歌だ。
大きなカラオケルームにあったスペースを小さなステージに見たて、歌い手がソロやペアやグループで歌って踊って、内輪だけのライブコンサートが開催されていた。

今年、どんな歌が流行っていたのだろう。

最新の流行りの歌を知らずに、学生時代に聞いていた歌を歌っていた。
流行っていたかはわからないけれど、最近見た映画の主題歌になっていて、好きになって買った歌を歌ってみた。初挑戦は緊張するし、なかなかうまくいかない。けれど歌い終わると、「その映画、俺も見たよ！」とひと話題。ひと盛り上がり。その後、映画の主題歌挿入歌が一巡二巡と続いていった。最後はみんなで、元気よく『さんぽ』を大合唱。トトロもびっくりに違いない。

そして今、わたしは自宅の冷たい床にうつ伏せに転がり、火照る頬を冷やしている。

「あいしてる〜のひびきだけで〜」

呟くように、掠れた声で歌い続ける。同じ場所を壊れたレコードのように、繰り返し繰り返し。
といっても、実際に壊れたレコードで歌を聞いたことがないから、実際はどんな風に聞こえるのかはわからないのだけれど。