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ふと、麻実が言ってたことを思い出し頬を染める。
ーーー プロポーズじゃない!
ずっとそばにいろってそういうことでしょ
「あ、あの..」
「ん?」
頬を染めて正座に座り直した仄は言いづらそうに膝の上で座る猫を握り締めた。
「私は、まだ将来とか、そういうの考えてなくて..」
「それで?」
「だから..あの、仙のことは好きだけど
結婚とか..そういう..」
テーブルについていた仙寺の肘が大きく傾いた。
「..は?!」
勢いよく仙寺が顔を上げ、仄は仄で驚いて顔を上げた。
「...プロポーズじゃないのって」
「誰にからかわれたんだよ」
頬を染めながら口許を隠して仙寺は顔を背けた。
「..麻実に..」
耳まで赤くして仄はうつむく。
「ごめん..」
呟いて、仄はTVに向き直す。
穴があったら入りたいとはこの事だ。
「仄」
背中越しに仙寺に呼ばれたけれど顔を合わせられなくて布団に潜り込む。
「おい、隠れんな」
それを引き剥がすと仄は仰向けで目をきつく閉じ、猫に対応させようと顔を庇う。
「..そうじゃなくて」
猫のくりくりの目玉が仙寺を見つめる。
仄の顔の両隣に覆い被さるように手をつくと仙寺は言った。
「ずっとそばにいて貰いたいのは本心。
家で仕事したらいらん心配しないで済むな
とも思った。ただ、俺にも時間がいるの」
「...」
「お前養うぐらいの仕事ついてからじゃないとプロポーズなんか出来るわけねえだろ」
仄がうっすらと瞼を上げる。
頭上で顔を赤らめながら仙寺は言うとそれを掴み、番犬ならぬ番猫は意とも容易く枕元に放られた。
「仄」
顔を背ける仄の頬に手を添える。
「こっち向けって」
目を伏せたまま、向き直る仄に思わず笑う。
「お前な、もう少し信用しろよ」
「..してるもん」
「嘘つけ、お前 俺のこと女癖の悪い奴だと思ってんだろ」
祠の影響が大きいが仄もかなり誤解してそうな気がした。
「....。」
「思ってんのか」
仄はようやく開けた目をそらして
「寝込み襲うし、何もしないって言ってたのにキス..するし」
「...。」
いや、したけど。
言い方がおかしいだろ。
「おでことか、ほっぺに..」
仄が言い終わるのを待たずに仙寺は唇を塞いだ。
「嫌なら嫌って言えよ」
腹が立ったのかそう言うともう一度それに重ねた。いつもとは違う、強引で長いキス。
うまく呼吸が出来なくて離れた途端に息を溢した
「お前以外にするわけねえだろ」
最後に呟くと仙寺は手を放して机へと体を向ける。その途中で胸ぐらを掴み仄は言った
「嫌なんて言ってない」
体を起こした勢いそのままに仄は顔を近づけ唇が微かに触れると顔を伏せた。
「...へたくそ」
仙寺が意地悪に笑う。
「だって..」
耳まで真っ赤で顔を伏せる仄にもう一度笑うと仙寺は言った。
「プロポーズはもう少し先にちゃんとするから待ってろ」
「そ、そういう意味じゃなくて..」
「黙って待つ」
返事をする。ふてくされた顔で視線を上げた先に仙寺の顔があった。
「こうやるんだよ」
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