選ぶのは神、仕えるのは人

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 高等教育学校を出てから、僕の仕事は何かというと、ずっとシステムメンテナンスだ。  それは『神』がそう決めたから。  部屋から部屋に回り、複雑に入り組んだ巨大な歯車たちの間を見て歩き(挟まれて死んだヤツを何人も知っている、だから僕は慎重だ)、時折、片隅に積もった塵や、歯車の間に溜まったゴミを取って歩く。  一緒に住んでいた妹は、長い研修期間を経て、三年前から今の仕事をやっていた。  近くにある3つの図書館を回り、すべての蔵書をチェックして、折り曲げられたページをもとに戻す作業員だ。  妹は義務教育の間、常に優秀だった。いつも学業はトップクラスで、特に理数系が強かった。  将来は、できれば医療機関で働きたい、といつも言っていた。  システムが変わったのは何年前からだろう。  政府が決めた単純明快なルール、それは 『神』が決めた仕事に就く。  しかも基本的には定年までの一生涯。  そして、神が命じたら、早期退職も転職も拒むことはできない。  僕たちの運命は最初から決まっているんだ。  家に引きこもる『潜在的労働力』を最大限に利用する『コッカソウドウインホウ』とかいうシステムの一環だったようだ。  元々は、高等教育学校卒業時に、本人の希望も考慮され、知識や能力に応じた職業を適宜割り振っていたようなのだが、いつの間にか、個人の希望や能力など、まるっきり無視されるようになっていた。  大昔にも同じ名前の法律があったらしいのだが、年寄りに言わせると、ドウの字が『働』に変わったらしい。
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