選ぶのは神、仕えるのは人

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 いつものように僕は業務を執り行っていた。  いつもは入ったことのない2737区画のB室、そこの歯車の間のゴミを取り除いていた時のことだ。  ふと顔を上げた時、歯車の上にスイッチが並び、いつものように名前が並んでいるのが目に入った。  真っ先に飛び込んだのが、妹の名前だった。  管理番号もついているので間違えようがない、妹本人のIDも確認できた。  名前の下には、職種が記されている。  確かに『図書館蔵書ページ折れ曲がり修正』とあった。  こんなところで決められていたのだ。今まで知らなかった。  というか、知らないふりをしていただけなのだが。  どこの区画、どこの部屋にも似たような歯車構造の機械が並び、頭上にはスイッチと名札、それに職種名のプレートが並んでいる。  丹念に探せば、僕のものも見つかったかも知れない。しかし、そんな偶然は千にひとつ、どころか憶、兆、京にひとつもないだろう。  妹の名を見つけたのはまさに『神』の御業だったのだろうか?  そして僕は、思わず歯車を手で動かしてしまった……力の限り。  いくつかの歯車がきしみ、蒸気が余計に上がり、ピストンが思いがけない激しさで上下し、動くはずのないクランクに命が宿った。  次から次へと、プレートの職種名が入れ替わる。並んでいたすべての名前の下、目まぐるしく入れ替わる職種名にめまいを覚え、僕は後退る。 「警告。システム異常発生、警告……」  アラートが鳴り響き、僕らは強制退去させられた。  だから結果は見ずじまいだった。
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