2話 恋人

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□◼︎□◼︎□ 「よかったの波瀾君?」 「ん?何が?」 「あっだって……お友達と話してたから……」  その言葉を聞いた波瀾は微笑む。 「何言ってんだよ優香(ゆうか)。俺は優香とお昼ご飯を食べたいからここに来たんだ。それに、あいつだって許してくれる……と思う」  そういや雄太のやつ、誰とお昼ご飯食べるんだろ?……もしかして、一人で食べるのでは…… (すまん雄太!俺の青春の為の犠牲となっておくれ!) 「波瀾君」  と綺羅優香(きらゆうか)は言う。 「ん?」 「あのね……あり……ありがと——」 「わっ!」    優香の言葉を遮るようにして一人の少女が波瀾にぶつかった。その少女は花山高校の制服を着ていたにも関わらず、背は小学生くらいだった。 「おっと、すまん」  と波瀾が言う。 「こちらこそ、ごめなさい!」  少女はお辞儀をして、近くに落ちていたゴルフバックを拾った。 「じゃあ、さようなら」 「ああ、じゃあな」  瞬きをすると少女は居なくなっていた。 「むー」 「ど、どうした」 「何でもないです!」 (何でコイツは不機嫌になっているんだ?)  女って分かんねー。  しっかし、さっき当たってきた子、綺麗な瞳だったなー、何というか……こう、守りたくなるような……そう!儚い瞳だった。  綺麗な瞳だったなぁ。でもまあ、優香には敵わないがな。 「なあ優香」 「むー」  何故不機嫌なのだろうか? 「あの、優香さん」 「むー」  め、面倒くせぇ。 「ああもう、優香早くご飯食べよう!だから行くぞ!」  波瀾はそう言って優香の手を握った。 「ッ!は、波瀾君……」 「反論はさせねぇ!さっさと空き教室に行くぞ!」 「えェェェェェ!?」 (こんな時はとにかく飯だ!お腹いっぱいになれば優香だって機嫌良くなるさ!) 「うぉォォォォォォォォォォ!!!!」  そうして、波瀾は廊下を駆けた。 □◼︎□◼︎□ 「ニヒヒッ。置いてかれたなぁ鴇波雄太」 「うるさい。学校では話しかけないでって言っただろ」 「はいはい。で、これからどうするんだ?」 「食堂に行く」  と雄太は言って、教室を出た。 「わっ!」 「おっと!」  雄太が教室を出たタイミングで少女が走ってきた。雄太はその少女とぶつかった。その少女の背の高さは小学生くらいで……。 「あの、ごめんなさい!」 「ああ、全然大丈夫だから。そっちは怪我してない?」 「大丈夫です!」 「分かった。じゃ」 「はい!じゃ、です!」  そうして二人は分かれた。 「……鴇波雄太、早く契約しねぇか?このままグダグダしてると——大変な事になるぜ」  エクサバトーはそう言ったが、僕は無視する事にした。催促は嫌いだし、何よりここには人が沢山居る。変人には思われたくない。 「たく、無視かよ」 (どうするべきかねー。雄太に言ったほうがいい気がするな。。まっ、いいか。このまま雄太の事を見ていよう。いつかは、契約のチャンスが訪れそうだしなぁ) 「ニヒヒッ」 「……なあエクサバトー、その笑い方辞めない?」 「ケチつけるのか?」 「いや……なんか怖い」 「そうかい」  その会話を最後に、僕は食券を購入した。  その後、美味しいラーメンを食べた。
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