インチキ霊媒師

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「うぎゃあああああ」  神林の凄まじい悲鳴が院内から外に漏れ出た。ほどなくして飛び出してきた彼の顔は、今にも死にそうなほど蒼白だった。そして谷の足にしがみつくやいなや、しきりに呟いている。 「許してください。許してください」  谷にはなすすべがなく、何十回も許しを乞うたかと思う頃、ついには彼は(うずくま)ってただ震えるだけになってしまった。  私は立花先生と目が合い、軽く微笑み合った。  私は先生と会談したあと、自らの進退を決めた。やらせ番組をぶち壊し、フリーでも何でもいい、とにかく真実を伝えるジャーナリストになろう。たとえ険しい道でも嘘をついて生きるよりいい。そう考えると清々しい気持ちになった。  立つ鳥跡を濁さずとも考えたが、先生の名誉を守るに越したことはない。知人に協力してもらい、ベストポジションで最善のタイミングで最恐のメイクを施したお化けに神林をビビらせてもらうことにした。  私の作戦は見事成功し、神林の醜態が晒された。  足元で小さくなっている神林を見下ろしていると、ブーブーと携帯電話が鳴った。お化け役に配していた知人からだった。 「浦木、さっき悲鳴が聞こえたけど、どうなってんの? まだ神林を待ってればいいの?」  私はその言葉にポカンと口を開け、立花の方を見た。 「だから言ったでしょう? 私が何もしなくとも彼のモヤ次第だと」  立花はそう囁くと、ニッコリ笑ってさらに付け加えた。 「あなたの背後にもちゃんと見えますよ。いかにも正義感の強そうな守護霊が」
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