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「……え、誰も、いないってこと?」
「誰もいないって?」
まるで禅問答みたいに繰り返される問いに何と答えればいいのかわからなくて、ぐっと黙り込んだ。俯き加減で瞼を伏せた俺に君はからからと笑って眉を下げた。
「ごめんごめん、困らせちゃったね」
困ってるのは俺なのにどうしてそんなに困った顔をするんだ。
「いや別に……困ってない」
「またまた、リキはすぐそうやって誤魔化す」
駄目だよ、ちゃんと言ってあげないと。
その言葉を聞くのはもう何度目だろう。でも、今日のその台詞には少しだけ違和感があった。そっとサツキを窺えば、君は「何?」と口角を上げて俺の方を見た。
「サツキ」
名を呼んだ。一瞬の沈黙が俺たちの間を通り抜けた。サツキの眉は下がったままだった。
「……何か、あったの」
「何も、」
「嘘つけ、」
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