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「私じゃ駄目だったの……ねぇ、リキ。私は、ちゃんと、貴方に時間をかけてきたわよね?」
「ッ、おかあ、さ」
「全部無駄だったってこと?」
突然壊れたように笑いだした母親が怖くなって逃げだした。バタン、と自分の部屋の扉を閉めて布団に潜り込んだ。
震えが止まらなかった。
次の日、母親だけがこの家から消えていた。
彼女はずっと父親だけを見つめていた。父親に傍に居て欲しいが為に俺を「いい子」に育て上げた。
ねぇ、じゃあさ。
――……用済みになった「いい子」の俺は何処へ消えたらいいの?
要らない子。いなくなっても誰も気にしない。
その思いは、理科と社会という教科が増えても、上履きが小さくなっても、制服に初めて腕を通しても、決して消えてはくれなかった。
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