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 黒のギターケース背負って、白のシャツにレザーのベストにフレアパンツ。長い髪を緩くまとめて、ふらふら歩いて来る。あ、帽子まで被ってるや。  ちゃーんとわかった。いつもながら、ただの練習にちゃんとした格好で来る玲次。  僕なんか、ジーンズにTシャツだけどなあ。  僕がここに立ってるの知ってるくせに、のんびり歩いて来やがんの。僕だって早くスタジオ入りたいんだけど。こんな日向で立ってたら、暑さでますますバカになってしまう。  玲次がここで待ってろってさ。どれくらい見えてんのか確かめたいんだって。  玲次に手招きする。ニヤニヤ笑ってる。仕方なく、僕から近付く。 「ちゃんと見えてんな」 「そんな格好してんの、お前だけだもん」  玲次が僕の頭をぽんぽんと叩く。撫でてるつもりらしい。 「俺の顔は見えてるか?」 「うん、思ってたより」  そう、思ったより。見とれるくらいには。 「大したことないじゃん」  頭を小突かれる。 「いってー」  僕も玲次に負けず劣らず、素直じゃないみたい。見たまんまなんて、照れくさくて言えない。 「ほれ、言ってみろ。龍樹」 「…玲次」  期待しまくった顔。割とナルシストだよね。
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