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「今時、眼鏡なんか作ることないんじゃないの?」
僕の、気ばかり若い母親は、さらっと言ってのけた。
「龍樹、鼻低いんだし」
「母さんまで」
「あら、誰かに言われたの? やっぱり」
やっぱりって何だよ、実の親! 産んだの誰だよ。
「…玲次」
「ああ、玲次くん」
母さんは、どうやら玲次を気に入ったらしい。
この間、何を思ったのか、玲次は一時間半もかかる僕の家まで遊びに来た。その時に、母さんに挨拶して行ったのだ。当然メンバーとして、だけど。
「あんな綺麗な子がうちにもいればねぇ」…が、母さんの感想。その昔GSの追っかけで、沢田研二と撮った写真が残ってたりする。すんません、あんな綺麗じゃなくて。でも、あなた似です。
「玲次くんが言うのも仕方ないわよね」
…僕の鼻が低いのはよーくわかった。話を進めてくれ。
眼鏡にしろコンタクトにしろ、僕の小遣いじゃ買えないから話を持ちかけたってのに、何で実の母親にコケにされなきゃなんないんだよ。
「で、玲次くんは何て言ってるの?」
「コンタクトにしろってさ」
「あらそう」
玲次はにこやかに愛想よく、好青年の印象を母さんに植え付けて行った。ほんと、外面のいいやつ。
「それなら、コンタクトにすればいいじゃないの?」
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