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 玲次が待ってるんだ。  校門のとこで絶対待ってるんだ。  それがわかっているから、足がなかなか進まない。なのにうちの学校は、絶対に正門以外の場所から出してはくれないのだ。  フェンス乗り越えちゃおうかなぁ…などと思ってはみるものの、自分の運動神経のなさを思い出して諦める。  玲次、待ってるんだ、絶対。  ため息をつくうちに、校門が近付いてくる。 「あ、待ってるじゃん」  友達の言葉に仕方なく顔を上げ、顔を顰めて目を細め、門柱のところをよーく見る。何となく、ブレザーの長髪が見える。  ああ、やっぱりいた…。  どうやらこちらを向いたらしい。 「遅っせぇぞ、龍樹」  その言葉に思わず回れ右。  いつもは僕も結構嬉しい玲次のお迎えも、今日ばかりは別。全然、歓迎できない。  だって、今日はコンタクト買いに行くんだ…。
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