13人が本棚に入れています
本棚に追加
この仕事を始めた本当の理由は
それから、インタビューを終えると、マネージャーと今後のスケジュールについて確認する。
試験期間中にキープしていた仕事を確認して、メールやファックスで回答出来るような仕事ーー小さなインタビュー記事の回答だった。を全て済ませてから事務所を出る。
水月を乗せて駐車場から出ると、外はすっかり暗くなっていた。
「せっかくだから、どこかで夕食を食べて帰ろうか」
「そうだね……」
二人共に特に食べたいものがなかったので、近くのファミリーレストランに入る。
仕事帰りのサラリーマンや勉強する学生同士で混む中で、二人は目立たないように、手短に夕食を済ませる。
長居をせず、また他に寄り道もしないで、そのままマンションに戻って来たのだった。
「帰ってきたね」
部屋に戻って来てリビングの電気を点けると、カーテンを閉める。
「そうだね……」
同じように水月もカバンを置くと、「あのさ、ソウくん」と声を掛けてくる。
「ソウくん……は、本当はどうしてアイドルになったの?」
部屋に戻ろうとした颯真は、その言葉に足を止める。
「水月?」
「今日のインタビュー、なんだかソウくんらしくなかった。この質問をされてから」
心配そうに見つめてくる水月に、「まいったな」と諦めたように颯真は肩を落とす。
「そんなにおかしかった、俺?」
「そこまでじゃないけど……少し」
ソファーに座った颯真の側にやって来ると、水月は困ったように小さく笑った。
「ソウくんなら、もっとちゃんとした理由を言うはずだから」
「そうだね。俺らしくなかったかも」
隣に座るように言うと、水月はそっと座る。
「水月は、俺がアイドルになる前、子役をしてたって知ってる?」
「うん。子役として活躍してて、高校生になる時に辞めたんだよね。それで、今回のオーディションでアイドルとして戻ってきた」
「そう。俳優の親父や叔父さんーー今の事務所の社長の伝手もあってね。物心をつく前から子役として活躍してたんだ。昼も夜も休みなく。だから、小学校も中学校も、全然通えなくて」
天井を見上げながら、颯真は続ける。
「だからさ。憧れていたんだ。普通の学生に」
「普通の学生?」
意外そうな顔で聞き返してきた水月に、颯真は大きく頷く。
最初のコメントを投稿しよう!