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そろそろ行きましょう
二人は吹屋ふるさと村を探索する。
古い町並み、ベンガラ漆喰の赤い町並みが特徴的であった。観光客は少なく、落ち着いた感じであった。
「なんだか昔にタイムスリップした見たい」巴は少女のようにはしゃいでいるように見える。ちなみに、彼女の年齢は27歳であった。
「本当に、不思議な感じですね。心が現れるような感じだ」刈谷はしみじみと言葉を噛みしめる。普段仕事をしているような場所にある雑居ビルのような建物は見当たらない。時間の流れもゆうっくりのような気がする。
「だ、誰かー!泥棒!」急に女性の声が聞こえる。その方向を見ると、声の主が道端に倒れて手を伸ばしながら叫んでいる。そしてその方向から一目散に男が走ってくる。
「どけ!そこをどけ!!」
「まさか、アイチャン!?」巴は男の前に飛び出すと足元を蹴り上げた。!男はバランスを崩す。空かさず刈谷が男の腕を掴むと軽く捻る。男の体は弧を描いて地面に落ちる。
「ち、畜生!!」男は苦痛に顔を歪めながら、ひたっくた鞄を放り投げると、立ち上がり逃げて行った。
「刈谷さん!凄い!」先ほどの刈谷の対捌きに巴は眼をキラキラさせている。
「いやあ、合気道を少し習っていたんで・・・・・・・、巴さんこそ勇敢ですね」男が放り投げた鞄を拾い女性の方に移動する。
「あ、ありがとうございます」巴に支えられながら女性は立ち上がった。少し高いヒールを履いていて、引ったくりを追いかける事も出来なかったようである。
「いいえ、お怪我はありませんでしたか?」刈谷が優しい微笑みで鞄を手渡す。受け取った女性は顔を赤らめている。その様子を見て、巴は少しムッとする。
「刈谷さん・・・・・・・・、そろそろ行きましょう」巴は刈谷の腕を掴むとグイグイと引っぱった。
「あ、ああ・・・・・」女性は少し名残惜しそうであった。
「巴さん、さっき・・・・・・・・・」刈谷は強引に腕を引かれながら聞いてみようとする。
「えっ?何・・・・・・・?」巴は振り返る。
「あっ、いや、なんでもありません」刈谷は、喉の辺りまで上がっていた言葉を口にする事を止めた。
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