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~3.「カミナ」その2
「君、もしかして私が来る前にアイツらに頭殴られたりしたの?」
ルナは自分が助けに入る前に、目の前の少年が頭を強打されたのかと心配したが、そんなハズは無いと思った。
あの時バイクを止めて助けに行く間にもあの男達とこの少年の会話は聞こえていたからだ。
照矢は静かに頭を抱えた。外れたと思った想像がやはり当たっていたからだ。
' ルナ…… 暴力沙汰にまで首を突っ込まないでくれ…… '
「…… 君、ちょっと座って!」
ルナは作業場の灯りを点け、中に少年を押しやってパイプ椅子を乱暴に引っ張り出して座らせた。そしてルナもドカッと腰掛け尋ねた。照矢も部屋に続いた。
「私は灰月 ルナ。君の名前は?」
「ボクはカミナです」
カミナは能天気に笑顔のままだ。
「カミナくんね。カミナくんはアイツらにタバコを額に押し付けられてなかった!?私にはそう見えたんだけど」
' あー…… '
照矢はおよそ状況を理解した。
「はい、押し付けられましたね」
カミナはニコニコと答える。
「じゃあ何で火傷してないの?私がヘルメットを被せた時、確かに火傷してた!眉間の上に水膨れ出来てたもん!」
ルナも助けに入った時に穏やかだった訳ではない。
いくら困っている人を見過ごせないからと身体が勝手に反応したと言っても、男3人相手に立ち回りを演じるには瞬間的に気持ちを「殺る」モードに切り替えねばならない。
そうでなければ暴力沙汰の状況に助けに入れはしない。
中途半端な気持ちで助けに入った人達は大抵取り返しのつかない事になってニュースを賑わす事になっているのをルナは知っていた。
カミナの額にタバコを押し付けられるのを見て緊急と判断したからこそ瞬時に気持ちを切り替え、3人を打ち倒したのだ。
だから興奮状態の中、早く手当てを施す必要を感じてカミナを連れ帰ったのだ。
とっくに酷い水膨れになってても全く不思議じゃないのに、当のカミナはケロッとしてるどころか火傷の形跡すらないのだからルナの口調も強くなろうと言うものだ。
しかしカミナはケロッとしてこう言った。
「あれくらいはすぐに治るんですよ
」
ルナも現実にカミナの火傷が治っている状態を見ては受け入れるしかない。
ないのだが!
「だったら家まで連れて来る事なかったじゃない」ルナは少しむくれてそう言った。
「いえ、ルナさんが手当てして下さるとボク、とても助かりますので」
ずっとニコニコしながら、いやワクワクしながらカミナは答える。
「…… カミナくん?さっきも言ったけど、火傷は治ってるんだから手当ても何も無いじゃない。それともやっぱりアイツらに何処か怪我でもさせられたの?」
怪訝そうにルナは尋ねた。
「アハハ、あの人達にボクを壊す事は出来ませんよ。それにボクが手当てして欲しいのはココです」
カミナは不可解な返事をした後、ルナと照矢に腰掛けたまま背中を向けた。
そしてカミナは長く伸びた髪を右手で横に引き寄せ、自分のうなじを二人に見える様に指さした。
ルナも照矢も顔を突き出しカミナのうなじに目をやった。
すると……
カミナの後頭部の髪の生え際。
うなじ部分から ' ジーッ 'とモーター音の様な音が聞こえたかと思った瞬間!
パカッと四角くフタが開いたのだ!
「「…… えええええ!!!!」」
ルナ・照矢
またもや親子二人がハモった。
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