ポケットの中の、愛

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 64まで進んだ年号のカウンターは、たった一週間で1にリセットされてしまった。  新しい時代の到来。だけど、僕には全く実感がない。世の中は景気が良くなっているみたいだけど、悲惨な事件は後を絶たない。世間を騒がしていた連続幼女殺人事件の犯人がようやく捕まったのだが、こいつがいわゆる「おたく」だったせいで、僕みたいに部屋にこもってアニメを見たりプログラムを書いたりしているような人間に対する世間の風当たりが、非常に強くなった。全くもっていい迷惑だ。  昼休み。インナーイヤータイプのヘッドフォンを両耳に突っ込み、それを接続したウォークマン SONY WM-3を再生させながら、僕は自分の席でポケコンの小さなキーボードをひたすらタイプしていた。  本当は16ビットのパソコンが欲しかった。だけど、何十万円もするようなものを高校生が買えるわけがない。MSXやファミコンすら買ってくれないうちの両親が、到底そんなものを買ってくれるはずもない。かろうじて、ポケコンだったらなんとか小遣いを貯めて買うことが出来た。それでも中古になってしまったが。  僕の愛機、PC-1251 は型落ちになってもう随分経っているが、結構売れたためこの機種で動くプログラムは雑誌に沢山載っている。しかもこの機種は機械語が使えるので、結構高速に動くプログラムも作れたりする。  雑誌のプログラムを入力するのに飽き足らなくなった僕は、最近では自分でプログラムを考えて打ち込むことが多くなってきた。 「何聴いてるの?」 「!」
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