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いきなりヘッドフォンが両耳から外される。振り返ると、クラスメイトで幼馴染みの足立 泰子が、それらを持って椅子に座っている僕を見下ろしていた。
長いストレートの黒髪。端整な顔立ち。体付きは痩せているが、最近ちょっと胸が膨らんできたみたいだ。現在絶賛バッシング中の「おたく」っぽい僕に、分け隔て無く声を掛けてくれる、数少ない……というか、実質唯一の女子だ。
「……聴いてみる?」
僕が言うと、泰子はためらいもなく自分の両耳にヘッドフォンを装着し、目を閉じた。
元々泰子と僕は音楽の好みが何となく似ていた。だから、こんな風に互いが互いの聴いてる音楽を聴いたりすることも良くあった。
正直、僕は彼女が好きだった。だけど……下手に告白したりして、こんな他愛のないやりとりができなくなるのは嫌だった。だから僕は自分の気持ちを、常に心のワークエリアの奥底のアドレスに格納したまま、呼び出すことは無かった。
「……」
彼女の顔に微笑みが浮かぶ。気に入ったのかな……?
「なんか、おしゃれっぽい曲だね。歌が入ってないんだ」
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