ポケットの中の、愛

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「ああ。シャカタク、ってグループだよ。イギリスの」  今再生しているのは、最近の僕のお気に入りのアルバム、"Da Makani"。シャカタクは"Night Birds"みたいな女性ボーカルもいいけど、インストも悪くない。 「へぇ。今度、私にもテープ貸してくれる?」  やった。気に入ってくれたんだ。僕は笑顔でうなずく。 「うん。いいよ」 「……また、何か難しそうなことしてんの?」  視線を僕の手元に移し、泰子は呆れ顔になる。こいつはプログラミングに全く興味が無いのだ。ファミコン持っててゲームはそこそこやってるくせに。 「ああ。今、占いのプログラム作ってる。もう少しでできるから、ちょっと待ってて」 「うん」  僕は大急ぎで残り3行を入力し、サブルーチンを完成させる。 「よし、できた。それじゃ、自分の名前をアルファベットで入れてみて」  RUNモードに切り替え、早速プログラムを実行した僕は、そのまま彼女にポケコンを手渡す。 「え……と……これでいいかな?」  覚束(おぼつか)ない一本指で、えらく時間をかけて彼女は ADACHI YASUKO と入力した。
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