ポケットの中の、愛

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「よし。じゃ、ENTER キーを押してみて」 「うん」  彼女が人差し指で ENTER キーを押すと、表示が始まった。  ANATA NO UNSEI HA....  DAIKICHI DESU. 「ダイキチ……大吉?」泰子の目が丸くなる。 「ああ、やったじゃん、泰子!」 「そっか、大吉か……でも、なんかコンピュータだと、あんまりありがたみが感じられないね」  彼女が苦笑する。 「……それは言わないでくれよ……」  僕がそう言った瞬間、5時間目開始を告げるチャイムが鳴った。 「じゃあね、一郎」泰子が手を振って自分の席に戻る。  もちろん彼女は知らない。  彼女の名前を入れたら必ず大吉が出るように、僕がプログラムしていたことを。 --- 「ねえ一郎!」  次の日の放課後。泰子はゴキゲンだった。 「なんだよ」 「すごいよ、あの占い大当たり! 昨日めちゃくちゃいいことがあったの!」  目を輝かせて、彼女が言う。 「へぇ」  驚いた。僕のプログラムにそんな御利益があったとは。 「それでさ一郎、そのコンピュータ、相性占いみたいなこともできるの?」 「……!」
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