小説家

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小説家

「空から何かが舞い降りて来る。 年の終わりの12月の始め。 その日はグレー色の空だった。 ラジオではお昼過ぎから雪が降りますと、 DJが朝からかかり始めのクリスマスソングと 共にお喋りを始める。」 11月のカレンダーの暦が終わろうとしていた。 私は意識を深く走らせ握ったペンに集中していた。 12月のクリスマス用の新作の短編小説を書く。 そろそろ締め切りに近い。 今年の話しはどうして私がクリスマス専門の小説を書くように なったかというのをおとぎ話し風に語っていくもの。 最後のページを書こうとしたところで徹夜のためか。 疲れで指先も冷えてきた。休もう。 締め切りの昼までには数時間ある。 あたたかい紅茶でも飲もう。 ポットの湯を沸かしながら台所の窓の外を見ると 早めの雪が降っていた。どうりで何時もより冷えるわけだ。 街の中央広場に既にたくさんの雪が降り積もっている。 よく見ると真ん中の凍りついた噴水の前に 小さなトナカイとソリのおもちゃが落ちていた。 後ろを振り返り部屋の棚を見ると毎年この時期から飾っている クリスマスのソリのアンティークのおもちゃがない。 すぐに分厚いコートとマフラーを巻き 小さな家のドアを開けた。 続
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