瀬名賞

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しかし、この瀬名先生は漫画で人生というものを表現し、今や漫画は普通に大人も読むものというものにまで地位を引き上げた凄い人なのだ。 そんな凄い天下の大作家の原動力には、嫉妬心というものがある。 先生はこの瀬名賞を受賞した作家に対し、毎回宣戦布告をし似たジャンル作品を作る。 そして瀬名先生の漫画のほうが『うまい』と言わせしめ勝利してみせるのだ。  ぼくは例のごとく先生の洗礼を受けることになってしまった。 正直言って瀬名先生はぼくにとって、第二の親のような存在である。 食えない時代から先生に、ご飯を御馳走してもらいスランプの時には適切にアドバイスをくださった。 そんな先生に嫉妬される存在になるとは、嬉しいのやら残念なのやら複雑な気持ちでいっぱいだ。 「参ったな……」 ぼくは受賞会場でたそがれていると、先輩作家である新海さんが近寄ってきた。 「アオキくんも大変だねー」 「もう他人事みたいに言わないでくださいよ」 「他人事だからね」 そういってあっけらかんに笑ってみせる新海先輩も、数年前に先生に宣戦布告されコテンパンにやられたクチだ。 「どうしたらいいんでしょうかね」
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