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「さあ? ボコボコにやられてみるのもいい経験なんじゃねえのかな」
いつもは頼りになるこの先輩作家も、今回ばかりは全く頼りになりそうにない。
「……けどこれ以上連載を増やして大丈夫なんですかね? 先生」
「さあな、先生の筆の速さとアイデアの泉は常人には測れねえからな」
「……そうですね」
先生の連載数は業界でも異常というほど異常だ。
ぼくみたいな週一連載一本の作家ですら、ひいひい言っているのに先生は週一連載を四本、隔週を二本、月間を二本抱えている。
そのため先生の家には、いつも編集者がおしかけている。
「すごいっすよねー」
「比べちゃいけないんだよ、あんな大天才とは」
「……そうですよね、でもどうしてぼくなんかにあんな挑戦状を叩きつけてきたんでしょう?」
「さあな大天才の考えることはわかりゃしねえ」
そういってぼくの隣に座った先輩作家は一度屈伸をし、立ち上がった。
「まあこれでもやるから元気だしなさいな」
そういって先輩は、ぼくにコーラ一本を手渡し懐柔しようとする。
「全く……ガキじゃないんですから」
そういいつつも、ぼくは手渡されたコーラを開けグイッと一杯飲みほす。
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