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コーラをぼくは嫌いじゃないからだ。
「で……ぼくの作品に対して何を描いてくるんでしょうね?」
ぼくは先輩作家にそう問いかけたが、もうそこには彼の姿はない。
「まったく……」
ぼくは、飲み干したコーラをゴミ箱へ捨て途方に暮れつつ立ち上がる。
「瀬名先生……」
ぼくは瀬名先生との思い出を懐古してみる。
先生との出会いは五年前に遡る。
漫画家を目指し上京したぼくは、右も左もわからない状態だった。
とりあえずということで、編集者に持ち込みをかけたぼくであったが、門前払いにされた。
しかし、そんなぼくの素質を見抜いた人がたまたまその場にはいた。
それが瀬名先生である。
「まだまだ荒削りなところがあるが、筋はなかなかいいじゃないか」
先生は、面白さを見抜く目もズバ抜けておりいくつもの作家を発掘した実績がある。
その実績を編集者も知っているので、そういうことならとぼくを拾ってくれた。
これがぼくと先生との出会いだ。
ぼくの漫画の描き方はまるっきし我流で、雑誌にはとても載せられるものではなかった。
なので先生のアシスタントとして雇ってもらい、そこで日銭を稼ぎつつ先生の技術を必死に盗んだ。
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