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さらに、続く大七階層、〝大焦熱地獄〟では……。
「――熱つっっ! む、無理です! これ以上近づいたら、わたしも焼き豚になります!」
もう入口からしてグリルオーブンのような熱風がごうごうと吹きつけて来るので、もうそれ以上前に進むことができなかった。
「ああ! 暑さは叫喚地獄の10倍だからな!」
「ま、ここはこれまで同様の罪プラス〝犯持戒人〟――即ち〝尼を犯す〟罪という今の世にはそぐわねえ入獄条件のとこだ。最近じゃほとんど新しい入獄者もいねえし、ここはパスしよう!」
自身も腕で顔を覆いながら大声を張り上げる牛頭馬頭さんの言う通り、この地獄は現代の社会情勢とあまり合っていないようだし、何よりも命の危険を感じるその暑さにわたし達は素通りすることに決めた。
そして、次はいよいよ最後の第八階層、〝阿鼻地獄〟だ……。
「――阿鼻地獄はここからさらに地の底深くにあってな。訪れるには人間界でいうところの〝スカイダイビング〟ってやつをしなくちゃならねえ」
「どうだ? 見学に行くか?」
真っ暗で底の見えぬ切り立った断崖絶壁の上に立ち、牛頭馬頭さんがそう説明をする。
今までの罪+父母・聖者殺しという最低最悪の罪人が落とされる地獄に反して、そこへの交通手段はそんなアトラクションであるらしい。
「え、スカイダイビングですか!? なんか楽しそう!」
以前より、一生に一度はやってみたいなあ…なんて思っていたわたしは、興味を惹かれて声を弾ませるのであったが……。
「ただし、下に着くまで自由落下速度で2000年かかるけどな。それでもいいって言うんならだけど、やってみるか?」
「誰がやるかいっ!」
それ聞いたら〝スカイダイビング〟とぜんぜんちゃうその補足説明に、わたしは思わずツッコミの叫びを底なしの渓谷に響き渡らせた。
(冥界の服役所 了)
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