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冥界の服役所
「――うぎゃあぁぁぁぁっ!」
「ぐえぇぇえぇーっ!」
不気味に赤く染まる空の下、所々、炎と煙が立ち上る荒涼とした蒸し暑い焼け野原に、断末魔の叫び声が途切れることなく響き渡っている……。
浅黒い肌をした巨漢の鬼達が金棒や大鉈を振るう度、その絶叫とともに人間の肉片や鮮血が舞い上がり、この赤い景色をますますどぎつい紅蓮の色に染め上げてゆく……。
「し、死ねえぇっ!」
「てめえこそくたばりやがれっ!」
また、鬼に追われる人間達も互いに相争い、手に生えた鋭い鉄の爪や錆びて刃毀れした古い刀が相手の痩せこけた半裸の肉体を傷つけあっている……。
「………………」
その、この世のものとは思えない地獄絵図を前にして、わたしはただただ呆然と立ち尽くしていた。
……いや、そもそもここは〝この世〟ではないし、まさにその〝地獄〟なのだ。比喩表現とかたとえ話とかではなく、正真正銘、ここはその〝地獄〟と呼ばれる場所なのである。
普通に聞いたら俄かには信じられないことにも、今、わたしは、その地獄に来てしまっているのである。
といっても、死後、生前の罪により地獄へ落とされたというわけではない……というか、わたしはまだ亡者でなく、ちゃんと生きている〝生身〟の人間なのだ。地獄行きの判決を食らった極悪人だと誤解しないでいただきたい。
ではなぜ、そんなまだ生きてるわたしが地獄になんかいるのかといえば、これは研修の一環としての〝地獄めぐりツアー〟なのである。
ここに到る経緯は複雑で、話せば長いことになるが……わたし、篁野々花は新卒で入った六波羅市の一般事務職員で、今年で早や二年目となる。
長引く不況の中、なんとか地元の市役所に就職できたのはよかったものの、その後、配属された先というのがなんというか……わたしの予想を遥かに上回る部署だった。
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