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「好きでこんな仕事始めたわけじゃないのに……ご先祖様が閻魔王庁の官吏だったっていうだけで、なんでこんな目に遭わなくちゃいけないのお!」
そのまま岩陰でうずくまると、わたしは腕で顔を覆って自分のありえない運命を嘆く。
……だが、地獄でそんな単独行動をとり、無防備な姿を晒したことがさらなる不運を招くこととなる。
「お! こんなとこに一人隠れていやがったか……」
「……え?」
その野太い声にふと顔を上げると、わたしの頭上には筋肉隆々の巨大な鬼が、これまた巨大な斧を振り上げてわたしのことを舌舐めずりしながら眺めている。
「亡者がいっちょ前に隠れてんじゃねえよ!」
「ま、待って! わたしは亡者じゃ…」
とんでもない誤解をされているその状況に気づき、慌てて声をあげようとしたその瞬間、強烈な痛みと筆舌に尽くしがたい恐怖を感じながら、わたしは一面の赤い景色の中で意識を失った――。
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