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それでも、まだまだわたしの地獄体験は続く……さらにその下層、第三の地獄、これまでの罪+邪淫を犯した者の行く〝衆合地獄〟では――。
「――ここってよく聞くあれですよね? 剣の葉が生えた木の上で美女が手招きをしていて、誘惑された男が登っていくと今度は木の根元に美女は移動してて、下りていくとなぜかまた木の上にいるんでまた登る…それを繰り返す内に、体中、鋭い剣の葉で刻まれちゃうっていう……」
こんもりと、銀色に輝く鋭利な刃が茂った大木の森を眺めながら、その有名な話を思い出したわたしは牛頭馬頭さんに尋ねる。
「まあそんな感じだ。だが、今のご時世、男女平等だし、性の在り方も多様化してるからな。そのニーズに合わせてここも進化してる」
「ほら、美女もロリ、ツンデレ、妹系~女王様系、女性用にアイドル、イケおじ、ショタ…と、オールジャンルカバーだ」
わたしの質問に、そう答えた牛頭馬頭さんのいう通り、狂ったように剣葉の木を登る血塗れの男女の目指す先には、さまざまなタイプの美女やイケメン達が各々の個性を発揮して亡者達を誘惑している。
「ば、バカ兄……そ、そんな迎えに来てくれたってうれしくなんかないんだからね……」
「この役立たずの豚ども! このあたしをいつまで待たせるつもり!」
「お嬢様、早く上がって来てくださいませ。お嬢様にとって、私はそれしきの人間だったのですか?」
「お姉ちゃ~ん! こわいよお~! はやくきて頬っぺたぷにぷにしてよお~!」
なるほどお……地獄も現実世界を反映して日進月歩で変化してるんだあ……。
わたしは、目の前で繰り広げられる凄惨な刑罰もすっかり忘れて、なんだか感慨深く頷いてしまった。
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