転機

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 それから、私は戸塚さんとよく話すようになった。  休憩時間に話したり、朝の挨拶の後に軽く会話をしたり。戸塚さんとは以前から挨拶はしていたけれど、その後に会話をする事はなかった。  好きな音楽、学生の頃の思い出__戸塚さんは冷静に私の話を聞いてくれるので、安心して会話が出来る。  今日も日課の掃除をする為に、朝一番に会社に着いたと思ったら、そこには戸塚さんがモップを持って五階を掃除していた。 「おはよう、相本さん」  戸塚さんも朝早くに出勤しているけど、私より早く来る事はない。なので、びっくりした。 「お、おはようございます………。珍しいですね、私より早く来るなんて」 「ああ。いつも相本さんに掃除して貰っているからね。たまには私もやらなければと思ってね。今日は五階をやると聞いていたから、モップで床を掃除していたよ」  戸塚さん、優しいんだな。私がいつも掃除をしている事に気づいてくれるの、戸塚さんだけだよ。  少し前は仕事は出来るけど、口数が少なくて表情が乏しくて、冷たい印象だったのに……。本当はとても優しい人。  たまに見せる笑顔が素敵_____。  あ、戸塚さんに任せていたら駄目だね。私も掃除しないと。  私は雑巾を取り出し、机を拭いていった。  
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