天使だって恋をする?

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「さてと。俺も行くか」  誰に聞いてもらうでもなく、そう呟くと畳んでいた羽根をバサリバサリと大きく動かし準備運動をした。  真っ白い羽根が風を生み、周りの空気が震えた。  ―――ちゃんとこんなに立派な白い羽根が付いてるってのにな……。  背中の大きな羽根の先端が視界に入るといつも思う。天使らしくない見た目から、仲間の天使たちからも少し遠巻きに見られている。そんな事は意も介さずに懐いてくるのはミシェ位だ。  ミシェから渡されたリストにしっかりと目を通す。今日のは、多分結構なエネルギーを要する。「武田新一、2000年1月1日生まれ」ミレニアムのめでたい日に生まれたというのに、こいつの年表はドス黒い。予定時刻は本日未明、場所は路地裏の冷たいアスファルトの上。  行ってみると、そいつは自分の身体の横でしゃがみこんで泣いていた。 「何でっ……何でこんなことに……ハッ……ハハ…」  ボロボロと涙を流しながら、自嘲気味な泣き笑いをするソイツの年表には、一見すると同情の余地はない。盗みを繰り返し、最終的には詐欺集団の一番下っ端、受け子役。どうやらで失敗して仲間と揉み合い、挙句転倒。後頭部をアスファルトの縁石に打ち付けて死亡。
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