天使だって恋をする?

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 まだ夜も明けない時間に、頭から流れ出た大量の血は冷えたアスファルトで黒い水溜りとなっている。安っぽいスウェットの上下だけの服装は、雪の便りが届くこの季節としてはかなり薄着で、余計に痛々しい姿だ。 「おい、大丈夫だぞ。迎えに来たから」  声をかけた俺の方を向いたソイツは、また力なく自嘲気味な笑いを繰り返した。 「ハッ………ハハ……、やっぱりそうだよな…地獄へ召喚、悪魔の使いが来た」 「バッ……ちげーよ! 見ろ、この白い羽根を! 天使、天使、天使だから!」  汚い言葉が出そうになって、すんでのところで飲み込んだ。  天使だと、言えば言うほど嘘くさくなるのは、およそ天使らしくない俺のこの外見のせいだと思う。  セルリアンブルーの髪は短くボサボサ、鋭い目線を隠すために伊達メガネをしているけど、多分あまり効果なし。白いローブはまるで似合わないから、セピアブラウンのセーターに色褪せたジーンズ。まあ、天使には見えないわな。
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