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魔王の子になる
魔界にて3人の魔王の子供が生まれた。
魔王は200歳になると、子供を作る。子供を作り終えると、魔界から冥界へと旅立つのである。子供は必ず3つ子が生まれ、その中の1人が、15歳になると魔王として、魔界に君臨するのである。
この15年の魔王の空白の期間は、魔王妃が、魔王補佐官として、魔界の秩序を守りながら、3人の子を育てるのである。
私は魔王の長女として、この魔界に転生した。3つ子のうち1番上の子が、強大なる魔力が、受け継がれるため、私が魔王最有力候補である。
私は3歳の誕生日の日に、突然前世の記憶を思いだしたのである。
私は、17歳の時に、異世界小説おきまりの、道路に飛び出した子供を助けた時に、車に跳ねられて死んでしまったのである。
良い行いをしたはずなのに、私が死後に連れて行かれたのは、地獄であった。思い出しただけでも、恐ろしい顔の、閻魔大王の裁きによって、地獄行きが決定したのであった。
閻魔大王は、死者を大きな鏡の前に立たせて、生前の悪行を写し出す。それを死者に見せて、真実か問うのである。閻魔大王に嘘は通じない。そこで、いいわけでもしたら、地獄でも過酷な場所に送られるのである。
鏡が写し出した、私の悪行は・・・・なんと、お姉ちゃんが、楽しみに冷蔵庫に保管してしていた、プリンを食べているところだった。
「お前は、姉の大事なプリンを食べたのは本当か？」
閻魔大王に、言い訳してはいけない。
「はい、そうです。」
「鬼卒、連れて行け、この地獄で1番の苦痛を与えるところに。」
鬼卒は閻魔大王の配下であり、刑罰の執行官である。私は鬼卒につれられて、閻魔大王の広間から出た。
「お前も、運が悪いよな。閻魔大王は、プリンが大好物だから、それを黙って食べるなんて、許せなかったのだろう。」
「私はそんな理由で、地獄に落とされたのですか。」
「そうだ。閻魔大王の独断でな。書類によると、お前は事故から、子供救った善人なので、地獄に来る予定では、なかったのだ。」
「・・・・・」
言葉にならない。
「でも、安心しろ、今回は閻魔大王に内緒で、お前の地獄行きは、なかった事にしてやる」
「ありがとうございます。」
「しかし、問題がある。いまさら、天国に行くことはできない。そこでだ、お前を異世界へ転生してやろう。」
「ありがとうございます。」
異世界転生小説好きの私にとって、異世界への転生は、天国に行くより嬉しい事だ。できたら、貴族に転生して、チート能力全開で、その世界の勇者になりたい。
「どのような世界に転生して、もらえるのでしょうか？」
「魔界だ。お詫びとして、魔王の子に転生してやろう。」
「・・・・・」
言葉にできない。
勇者じゃなくて、魔王の方・・・
「なんだ、その驚いた顔は。ここは地獄だ。人間に転生させるのは、無理だ。嫌なら地獄で過ごすか？」
地獄で苦しみ続けるより、マシだと思い、渋々了解した。
「転生させてやるが、生まれてすぐに、記憶があると、いろいろ大変だろう。なので3歳になったら、記憶が蘇るようにしといてやる」
そして、私は魔王の子として転生したのであった。
魔王の子は3歳から5歳までの間に、魔界のあらゆる知識、戦闘訓練、魔力操作など、魔王になる為の英才教育を受ける事になる。
特に魔王に1番近いと言われる私には、魔王妃直々に教育をうけ、弟2人には雲泥の差をつける知識、魔力、教養、戦闘力を身につけてしまったのである。
そして、魔王の子は5歳の誕生日に、悪魔と契約し、さらに絶大なる力を手に入れる。その為、どれだけ力を持つ悪魔と契約する事が、大事なのである。
私のお父様、すなわち先代の魔王は、3人の悪魔と契約していた。その中には悪魔の王サタンがいた。
そして5歳の誕生日を迎えた。悪魔との契約するこの運命の日、私は魔王城の地下にある魔王書庫に幽閉される事になる。
どうしてこうなった！
「ルシスちゃん、ついに悪魔と契約する日がきたわね、あなたの魔力量なら、お父様より偉大な魔王になれるはずよ。」
お母さまは、私に優しく微笑みながら言ってくれた。
私の名はルシス。3人の魔王の子の長女であり、魔王最有力候補である。お母さまは、女系が魔王になることを望んでいたので、私には対する期待感は、大きいものであった。
「はい、お母さま。素敵な悪魔様と契約して、私が魔王の座につきますので、安心してください」
・・・とは言ったものの、私には不安しかない。私に悪魔と契約なんてできるのかしら？魔王の子に転生したが、前世の記憶があり、悪魔との契約は、とても緊張してしまう。
「天使なら嬉しかったのになぁー」
と心の中で呟いていた。
「カァラァ、リプロもお姉ちゃんに負けないように、偉大な悪魔と契約するのよ。」
「はい、お母さま。お姉ちゃんには敵わないので、お姉ちゃんの力になれるように、偉大なる悪魔様と契約してきます。」
カァラァ、リプロは私の二人の弟である。私より魔力量は少ないが、二人ともかなり魔力量の持ち主である。この二人のどちらかが魔王になっても、魔界をバランスを保てるだけの能力は持っている。
悪魔との契約の儀式は、魔王城にある【契りの間】で順番に行われる。順番はリプロ、カァラァ、そして私である。
「最後は嫌だなぁー」
とまた心の中で呟いた。私は嫌なことは、最初に済ませたい派である。
「お母様、いってまいります。」
リプロは、自信溢れる表情で契りの間に進む。偉大なる悪魔様と契約して、お姉ちゃんの力になることを望んで。
「いってらっしゃい。がんばってくるのよ」
「はぁー」
私はついついため息がでる。悪魔との契約ってどんな事をするのだろう。お母さまに聞いても儀式の内容は他言できないらしく、教えてくれない。簡単なものとは、お母さまは言ってはいたが、不安でしかない。だって悪魔だよ！
30分後、リプロは契りの間から出てきた。
「お母さま、3人の悪魔様と契約できました。この力を自在に使えるように、これから日々訓練し、お姉ちゃんの配下として頑張ります」
「よかったわね。3人もの悪魔と契約できて、ルシスの力になれるように、頑張るのよ」
「はい。お母さま」
次はカァラァの番である。カァラァもリプロと同様に3人の悪魔との契約に成功する。
「僕もお姉ちゃんの力になれるように頑張ります。」
と嬉しそうに答えた。
2人の弟は、お姉ちゃん大好きっ子に育ってしまっている。魔王はお姉ちゃんになってもらって、2人でお姉ちゃんのサポートするのが、２人の弟の目標に、なっているのである。
そうなるように、お母さまが育てたというのが、正解なのかもしれないが。
そしてついに私の番が来てしまった！
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