65人が本棚に入れています
本棚に追加
人界へパート3
しかし、私には逃げる事しかできない。私は、森の方へ逃げるのは危険だと感じた。
森へと繋がる道には、誰もいない。そう、助けを呼ぶことが、できないのである。
もしかしたら、町の人も、亜人が嫌いで、助けてくれないのかもしれない。しかし誰もいない森の方へ、逃げるのは、とても危険だと感じた。なので私は、門を通って、町の中へ逃げることにした。もしかしたら、私を助けてくれる人が、いるかもしれないと信じて。
「誰か助けてください。門兵の人が、私のことを連れ去ろうとしてます」
と叫びながら私は、全力で町の中へ走って、逃げていった。
「そこの亜人止まりやがれ。亜人風情が、この町に入ることは、許さないぞ」
すごい勢いで門兵は、私を追いかけてくる。
門兵はまさか、町の中へと逃げるとは、思っていなかった。亜人なら、仲間がいてそうな森へ、逃げると思っていたからである。その為、少し行動が、遅れてしまっていた。
「助けてください。助けてください」
私は、叫びながら必死に逃げた。
しかし子供の足では、大人から逃げることなんて、出来なかった。
私は門を抜けて、すぐのところで、簡単に取り押さえられたのであった。
「この亜人がぁ。逃げられると、思っているのか?町に逃げ込んだからといっても、お前なんか誰も助けてくれないぞ!」
「助けてください。私は何も悪い事は、していません。」
「何を言ってるんだ、この亜人は、亜人であることが悪いことなんだよ!」
やはりこの町は、ハズレの町だったみたいだ、私が助けを求めても、誰も助けてはくれない。町の人たちは、見て見ぬふりをするか、こちらを見てニヤニヤ笑っている人か、どちらかである。
「助けてください。助けください。私は何も悪くはありません。」
それでも私は叫び続けたのである。
「うるさいぞこの亜人め。少しは黙りやがれ。」
そういうと門兵は、おさえつけていた私のお腹を、蹴っ飛ばしたのである。
なんで私は、こんな目に合わないといけないの。明日まで魔王城に、いることができていたら、お母様に全てを話し、また家族で仲良く過ごせたはずなのに。
私はお腹も蹴られた痛みよりも、自分の境遇が悲しなり、涙が溢れて出てきたのであった。
「助けてください。助けてください。」
それでも諦めずに私は、泣き叫びながら、助けを求めた。
「うるさいぞ、泣こうが叫ぼうが、誰も亜人なんか助けることなんか、ないんだぞ。」
そういうと門兵たちは、さらに私に、蹴りを入れるのであった。
「何をしているの?」
長い黒髪の、背の高い綺麗な女性が、門兵に声をかけた。
「うるせぇー。この亜人が、勝手に町に入ったから、痛めつけてやってるだけだ。」
「そんな小さい女の子を、大人2人で、おさえつけて蹴飛ばすなんて、やりすぎじゃないの?」
「うるせぇー。亜人なんて、なにをされても当然じゃないか。」
「それはおかしいな。この国の王は、亜人も獣人も人間も、同じ人界の民であり、平等に接するように、言っているではないか?あなたがたは、国王に意向に背くつもりなのか?」
「それは…」
「その女の子が、勝手に町に入った罰は、もう充分に受けたはずだ。だからその女の子を解放してもらおう」
「うるせえなぁ。俺を誰だと思っている。」
「お前は…」
門兵の顔がみるみる青くなっていく。
「ちぇっ、解放してやる。」
「私がその女の子の面倒をみるから、この町への入場許可をもらってもよいかな」
「好きにしたらいい」
門兵は、そう言うと、町の門へ戻っていった。
「大丈夫かい?」
「はい。ありがとうございます」
「私は、仲間と一緒に、その宿屋に泊まっているので、そこで治療をしてあげるよ。それに、今日泊まるところが、決まってないのなら、一緒に泊まらない?」
「亜人の私が、宿屋に入っても問題ないのですか、助けてもらったうえに、ご迷惑をかけたくありません」
「大丈夫だよ。あそこの宿屋の主人は、国王の意向に理解のある方だからね」
「でも私お金持っていないので、宿賃払えないです」
「お金なんて気にしなくていいよ。私が出してあげるから」
「何から何まで、ホントにありがとうございます。」
ハズレの町だと思ったが、とても親切な人と出会えて、私はとても嬉しかった。
「くぅぅーー」
私は安心して気が緩み、お腹の音が鳴ってしまった。そういえば、ずっと何も食べてはいなかった。
「お部屋代だけじゃなく、食事もご馳走してあげるね」
と笑いながら言って、私を助けてくれた女性は、私を連れて宿屋に向かったのであった。
最初のコメントを投稿しよう!