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                       「ローガン、あの冒険者は、町に帰ってこないだろう。」  「それはいいことだ。あの冒険者は気に入らねぇ。エルフもいてるが、なにより、あの亜人をかばい、仲間にしたみたいだからな。町長の子である俺に、逆らうなんて、魔獣の餌になればいいんだよ。」  「お前の願いは叶うだろ。実は、あのベアーウルフの討伐依頼には、新しい情報が、報告されていないのだよ」  「そうなのか?ルーク。」  この2人は、町の門兵達だ。町長の息子がローガン。そしてもう1人の門兵がルークである。  「討伐依頼書には、ベアーウルフ3体が、町の周囲で目撃された。となっているが、その後の調査で、10体の群れのベアーウルフが、目撃されている。」  「本当なのか、そんなの町にきたら、この町は大混乱になる。」  「いや、本当にやばいのは、キマイラが目撃されたと言うことだ。」  「本当なのか」  「間違いないと思う。ベアーウルフが、目撃されたのは、この町だけではない。俺の前に住んでいた町でも、ベアーウルフは目撃されていて、討伐依頼が出されていたんだよ。しかし討伐は、失敗に終わったらしい。10体のベアーウルフの群れを確認後、キマイラがあらわれて、逃げて帰ってきたみたいだ。今は、王都の冒険者組合に依頼をだして、上級冒険者を探しているところだ。」  「そうか、上級冒険者が来てくれるなら安心だ。」  「だから、あの中級冒険者では、勝てるはずはない。殺されるか、逃げ出すだろう。」  「それは面白い。逃げ帰った奴らを、笑い飛ばしてやろう。それにこの町には、もうあの冒険者は必要ないから、追い返してやろう。」  「それは面白いな。」    私たちはやっと町に戻ってきた。  「帰りが早いな。魔獣から逃げて帰って来たのか。」  門兵は、笑いながら私たちに話しかけてきた。  「依頼通り、きちんとベアーウルフを倒してきた。町に入れてもらおうか。」  「なんだと、そんなわけないだろう。それに、討伐したには、早すぎるぞ。」  「証拠ならある。魔石を確認してもらったらわかるはずだ。」  ロキさんは、門兵の言いがかりに、冷静に答えている。町に戻る途中に、ロキさんは、こうなることは予想していたみたいで、トールさんには、大人しく我慢するように伝えてあった。  「そんな話し、信じられるか。あの森には、ベアーウルフは10体も目撃されてる。しかもキマイラの目撃情報だってある。Dランクの冒険者が無事に討伐できるなんてありえない。」  「なんであなたは、ベアーウルフの数、しかもキマイラの存在も知っているのかな?」  「そんなことお前らに、関係ないだろ。」  「討伐依頼を出したのは、この町の町長だ。森の中の詳しい情報を、知らせるのは、この町に住む者の義務のはずだ。あなた方は、冒険者ギルドへの報告を怠った罪人だ。」  「うるせぇー、お前たちを、この町に入れさせるわけにはいかない。ベアーウルフを討伐しようが、亜人やエルフのいる冒険者は、俺は認めない。この町から出ていけー」  「それはこの町の代表として、言っているのですか?冒険者に依頼を出しておきながら、依頼を達成した冒険者を追い出すことを」  「俺はこの町の町長の息子だ。俺の決定がこの町の決定だ。破滅の象徴の亜人に、汚らわしい血が流れるエルフなど、俺がいる限りこの町には入らせない。」  「てめら、ぶち殺すぞ。」  我慢していたトールさんが、キレてしまった。ハンマーを門兵に向けて、今にも襲いかかりそうだ。  「仲間を侮辱するのは、絶対にゆるさん」  「俺に手を出すのか?町長の息子だぞ。門兵をしているが、俺の身分は貴族だぞ。貴族に手を出したらこの国では、死罪に値するんだぞ。」  「はぁー。お前は冒険者ギルドの規則を破った。それに対して制裁しても罪に問われるかよ。」  「うるせぇー、冒険者と貴族の話し、どちらを信用すると思う。俺に手を出したら、必ず死刑にしてやる。」  「望むところだ。お前はこの場で叩きのめす。ロキ止めるなよ。」  ロキさんもポロンさんも静かに縦に首を振った。2人の怒りも頂点にたっていた。  その時…  「出ていくのは、ローガンあなたのほうよ。」  町から1人の女性が現れた。  「冒険者の皆様、まことに申し訳ございません。私の息子が、たいへん失礼な対応してしまって、いくら謝っても足りません。」  その女性は、このキャベッジ町の、町長のカミラ・スペンサー男爵である。  「あなたは、なんてことをしてくれたの。今まであなたがしてきたことは、たいていのことは目をつぶって我慢してきました。でも今回の件は、見逃すことはできません。」  「どうしてだよ。あんな亜人やエルフのいる冒険者なんて、どうなってもいいはずだろう。」  「黙りなさい。あなたのその偏った考えは間違いです。この国では、いかなる種族も差別することは許されません。」  「なんでお母さんは、わかってくれないんだ。神守教会の教えでは、亜人もエルフも人間に害を及ぼす魔物なんだよ。」  「だから、その教えは間違っているのよ。あなたのような考えの子は、この町に住ませるわけにはいかないのよ。だから出ていきなさい。出ていかないのなら、衛兵に頼んで、今回の件で冒険者ギルドに突き出します。」  「くそー。おぼえとけお前ら、この借りはかならず、何倍にして返してやるからな。」  そういうと門兵2人は走って逃げていった。  
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