MONOKURO

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今日はMONOKUROが始まる日。新宿の小さなライブハウスでシークレットとして出演する。karen以外のメンバーには元々のファンがいるらしくどこから聞きつけたのか分からないが何人かは来ていた。 「緊張しちゃうなぁ・・・。それに僕、この格好慣れないよ」とkarenは女形の衣装をヒラヒラさせながら不安と緊張で入り交じった声でぽそりと呟いた。誰よりも似合っていたので「そのうち見慣れるし、女形が様になっていくよー」と誰かしらが言っていた。スタッフだったのかメイクさんだったのか、よく覚えてないけどメンバーは楽屋でそれぞれ自由に過ごしていた。 reikaがこちらへ近付いてきて「あ、そうだ。karenはこれから一人称を"僕"じゃなくて"かれん"にしてね。」と言う。「えぇっ?!」と困惑に近い声が出た。無理だよ、と言おうとしたらreikaはkarenの唇に人差し指をそっと置き「かれん、出来るよね?」と言うから僕はズルいなと思った。ユウキと空はreikaがkarenを可愛がる様子を羨ましいといった感じで眺めていた。 「さぁ、行こうかーー。」 reikaのその言葉から幕が落とされた。MONOKUROの始まりだ。 ステージは少し狭いくらいで小さなライブハウスにはお客さんが見る限り6~70人はいた。シークレットとして出演しているし目当てで見に来たというようなお客さんは数人だろう。 MONOKUROがステージに立つと、空気感がピリッと変わりさっきまで興味無さそうに虚ろな目をしていたお客さんがステージに釘付けになった。いや、会場にいたお客さんほとんどがその異様な空気感に気付きこちらをじっと見ている。それもその筈だ、reikaにはそんな存在感があった。 慣れない内股をしながら僕はその日のステージを全力で全うした。客席側を見る余裕はなかったけど、reikaが捌ける前に「ありがとうございました」と言っている時に客席側に目を向けたら熱い目線を送っている男のお客さん2人組がいてしっかり目が合った。ニコッとぎこちない笑顔を見せると2人組はワァ!とちょっと気持ち悪い声をあげて喜んでいた。「かれーーん!!」と1番前の列にいる女性のお客さんが声を上げた。チラッと目配せをするとニコニコしていて何故か安心出来た。汗が滴り落ちてきた、ライブって気持ちいいな。そんな事を考えながら軽くお辞儀をしてステージから去った。
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