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やるべきことなんて、本当はどこにも無いのかもしれない。それがあると主張する人間は、世界に何を見出しているのか、本当に計り知れない。
計り知れないというより、度し難いという方が近いだろうか。
そんなことを、萌崎君に渡された契約書を読んで思っていた。
「人生に切羽詰まってやることなんか、あるのかねえ」
かつん、と捺印してから呟いても、応える者などいないのだけれど。
課題を終わらせて、ようやく眠気が脳の全体を覆い始めた頃。時刻は午後十一時を回っていた。
机の上を片付けて、空いた天板に俯せる。
変な一日だよ、と小さく呟いて。
そのまま瞼を閉じた。
意識が消えるその前に、小さな寒気を感じたのを無視しながら。
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