壱「ヴァリアントグリーン」

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 やるべきことなんて、本当はどこにも無いのかもしれない。それがあると主張する人間は、世界に何を見出しているのか、本当に計り知れない。  計り知れないというより、度し難いという方が近いだろうか。  そんなことを、萌崎君に渡された契約書を読んで思っていた。 「人生に切羽詰まってやることなんか、あるのかねえ」  かつん、と捺印してから呟いても、応える者などいないのだけれど。  課題を終わらせて、ようやく眠気が脳の全体を覆い始めた頃。時刻は午後十一時を回っていた。  机の上を片付けて、空いた天板に俯せる。  変な一日だよ、と小さく呟いて。  そのまま瞼を閉じた。  意識が消えるその前に、小さな寒気を感じたのを無視しながら。
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