「◯◯◯◯しないと出られない部屋」に閉じ込められた男女二人が『仕事を選んだ理由』を語り合う話。

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 ラブホテルみたいな円形ベッドに隣り合って二人は座っている。  心なしかその距離は初めに比べると少し近いように見える。  二人は真っ直ぐにディスプレイのうさぎの方に向く。  【自己紹介】は終わった。  だからこの【自己紹介しないと出られない部屋】から出せと言わんばかりに。  その時、ディスプレイ上のうさぎ――ウサリオンが長い耳をピクピクさせて口を開いた。 『自己紹介お疲れさまでした〜! 本当の自分を晒すことで、お互いを隔てる壁が取り払われたんじゃないかな? 本当のコトは君たちの心を裸にするんだピョーン!』  その言葉に行成は余裕を見せて小さく笑む。玲奈も否定はしない。 「ああ、なかなか興味深い時間だったよ。さあ、要件は終わっただろ? 俺たちを解放してくれよ、このうさぎVTuber!」 「うん。それなりに面白かったけれど、私は夜勤明けで早く家に帰りたいの。さっさと解放してよね!」  二人はこの空間からの解放を願った。せっかく知り合った相手と別れることに、少しだけの未練を抱えながらも。  しかし、それを聞いたウサリオンが、怪訝そうな表情で首を傾げる。 『ん? お前たち何か勘違いしていないか? このまま解放するはずないじゃないか? ゲームはここから始まるんだピョン?』 「「――え?」」  行成と玲奈は首を傾げる。  もしかすると自分たちは何かとんでもない勘違いをしていたのかもしれない―― 『うむ。これから肌を重ね合う二人。体が裸になる前に、心を裸にするのは、とても良い導入だと思ったんだピョン! さて、自己紹介も終わったところで、本題に進もうかと思うピョン――』  部屋に響くうさぎのイケボに嫌な予感を覚えながら二人は顔を見合わせる。  そしてまた、重低音が鳴り響いた。  デデーン! 『【セックスしないと出られない部屋】へようこそ! これから二人には愛あるセックスをしてもらうピョーン! 二人の間で素敵な性行為が行われない限り、二人は永遠にこの部屋から出られないんだピョーン!』  ラブホテルみたいな部屋で煽情的な関節照明が二人を照らした。 「「やっぱりそっちかぁぁぁぁぁーーーーーーッッ!!」」 【完】
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