10人が本棚に入れています
本棚に追加
地獄閉門
その時、都内には大規模霊災が発生していた。
突然現れ開いた地獄門。突如無数に湧出した悪霊に亡者。霊防省祓魔課は、長官を招聘しようか真剣に悩んでいた。
悪霊達が、祓魔課職員に襲いかかろうとした時、白刃が閃いた。
「フナ侍が一翼、松葉見参!お下がりあれ各々方!」
「フナ侍?まさか!あの方が?!きゃあああああああああ!」
祓魔課職員の女達は沸いていた。
その時、門に手をかけ、巨大な威霊の出現があった。
現れた平将門は、ベースを背負った青年の扇の一薙ぎで、道路や自動車諸共消滅した。
「米はまだ買ってないぞノリリン!」
「じゃあ終わったら買ってきて」
恐ろしい霊力に裏打ちされた封緘で、地獄門は閉ざされていった。
突如、大規模霊災を未然に防いでしまったのは、最強の祓魔夫婦、風間静也と皇家百宮、田所紀子前親王だった。
「全く。この程度の霊災くらい自分で何とかしなさいよ。鵺徳!話聞いてんの?!中坊だからってだらけてるとかますわよあんた!それでも陰陽師か!周りが皆殺しになってもあんただけは無傷!それでなくて何が陰陽師か?!」
凄い嫌な心得を押しつけてきた。
「ひ、ひい!蹴らないでください!ノーモア動物虐待皇女(笑)!」
現在の見習い祓魔官、稲荷山宗春の長子、宗徳(13歳)は怯えて言った。
「一言多い!座れお前はああああああああ!」
その時、静也の鼻が、霊気の痕跡を捉えた。
「紀子。神の降臨だ」
「ああ?って、ヘルじゃないの。この門高田馬場駅前なんてすっとぼけた所に設置したのあんた?」
現れた神の名に、祓魔課は心底ブルっていた。
その神相手に平然とタメ口利いてる紀子はもっと怖かった。
「勝手に出て来て開いたのはどうしようと思ったけど、貴女達がいてよかったわ」
門を眺めていたのは、伊豆半島の怨霊、物部霊子。またの名を、地獄の神ヘルだった。
「大体門構えに千客万来おいでやすって提灯とか、舐めてるの?地獄はこっちを。ファンシーな見た目だけど、被害は絶大よ。またバウンズが出てくるじゃない」
この門の恐ろしさは、門から来る悪霊でも亡者でもなく、地獄の空気そのものにあった。
かつて、地獄を現世に勧請した娘の影響で、地獄の空気を吸って異能に目覚めてしまった人間達がいた。
彼等は、バウンズを自称して人間社会に敵対したのだった。
「それはまあそうなんだけど。高田馬場駅に開いたのは目測を誤ったからよ。本来は、渋谷駅に出るはずだった。酷い失敗をしたそいつは、逆に地獄に引きずり込まれてしまっているのよ」
「その馬鹿は誰よ?」
「渋谷駅のすぐ近くに、そいつは住んでいたのよ。住む人間がいなくなって、無人の館の管理を任されたそいつは、思い付きで地獄門をすぐ近くに開こうとした。ハデスに反旗を翻そうとした。地獄門を作り替え、地獄炉を作ろうとして完全に失敗した。地獄を支配していた王達は、寄る辺を失った」
大体理解した。
「で、そのいっつも裏切ろうとしている短小払底悪魔を従えたおっさんは今どこにいるの?残念なことにその冥界の神は、私の師匠だって知ってる?」
脱力した百鬼姫はそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!