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「まああれだな。冠外しただけで子連れの父ちゃんに敵うものか。お前、ミカエル程度と拮抗してるだろう?俺を誰と思っている」
「ハデス様ですううううううううう!助けてええええええええええええええ!鼻にドロッとした小便と血があああああああああ!」
悲鳴を上げている定岡さんをよそに、勘解由小路のズボンをツンツンして水色は言った。
「ねーねー。だいしゅきなパパー」
「うん?どうした水色?ウンチならオムツ外して定岡さんの顔に」
いやああああああああああああ?!
定岡さん絶叫。水色は可愛く首を傾げて言った。
「定岡さんを頂戴?」
うん?うーん。勘解由小路は少し唸った。
水色の秘密はもう把握してある。父親と兄の前でだけ、水色は普段とは違う顔を見せるのだ。
その顔に、かつて勘解由小路は殺されたのだ。
「うん。流紫降は今いないぞ?」
「うん。前にやり残したことがあるの。迷惑はかけないわ。半年で私は、パパママやお兄ちゃんとお姉ちゃんに、たくさん愛を貰ったから」
「うん解った。おいで水色。父ちゃんはここで待ってるからな?ああ可愛い娘だお前は。愛してるぞ水色」
「うん。私大きくなったら素敵な恋をするわ。パパの赤ちゃんは産めないけど」
「みじゅいろが行くならじゃーも行くー」
「みーちゃんと一緒ー。むーもー」
三つ子は水色を抱き締めた。
歩き回り喋りまくる生後半年の赤ん坊だが、勘解由小路家では割と普通だった。
「まあ嬉しい。愛してるわお姉ちゃん達♡水色は幸せな子ね」
ヤコー。ヤコーしゅきーって言ってるところからも普通ではない三つ子の2人だった。
「そんな訳だ定岡さん。三つ子に怪我させたら消す。死ぬ気で守れよ」
勘解由小路の恐怖の三つ子の出鱈目を目の当たりにするのは、どうやら定岡さんっぽかった。
「父ちゃんはここでコーヒー飲んで待ってるからなー。気をつけて行ってこいよお前達ー」
抱っこ紐とおんぶ紐をくくりつけられた定岡さんと子供達を、父親は手を振って見送った。
三つ子の初めてのお使いは地獄の底。
やっぱり勘解由小路は出鱈目だったのだった。
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