双子の目に写るもの

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双子の目に写るもの

 勘解由小路降魔の息子、現在高校2年生の勘解由小路流紫降は、突然やって来た双子の妹、(ジャスパー)を自宅で向かえていた。 「可愛い甥っ子に会いに来たぞ。来い小流降(こるふる)」  まだ生後3ヶ月の甥っ子を抱いた。 「きゃあー。ばー、ばー」  生後3ヶ月でもう喋っているのを誰も不可解に思わなかった。私の時はもう立っていたぞ。流紫降もな。  流紫降なんか莉里が産まれた時既に歩き回ってたな。暇さえあれば莉里のベッドを覗きにいっていた。 「ばーばはママだろうが」 「母さんにそっくりなんだよ碧ちゃんは。顔立ちは勿論、特におっぱいが」  姪の翡翠ちゃんを出産して以降、碧は母親の真琴にとても似ているように思えた。 「まあな。最近鏡を見る度にママが裸眼を晒していてな。思わず翡翠ちゃんを落としかけた。首が据わっていてよかったぞ。本人は嬉しそうだった。髪を短くしたら議員になれるな私は。興味ないんだが。それでな流紫降。パパは大丈夫なんだろうな?この前から何かがおかしい」 碧の特異性が発揮されていた。 高すぎる危機管理能力。 そう言えば、父さんのギックリ腰も、碧ちゃんが予見したんだったね。 「碧ちゃん、覚えてる?思えばあのコンサートはおかしかった。1番太いD弦が、ただ弾くだけで切れたのはおかしい。まあギックリ腰はともかくとして、全然気にしなかった父さんは不可解だよ」 「ギックリ腰の時はママがバーバヤガーを睨み殺したな」 結果としてあのバーバヤガーは冤罪だったことになる。 あれは鬼滅グッズで荒稼ぎしようとしたオタクババアってだけだった。 「父さんは最近、運に見放された気がしてるよ。普通の人はそれほどでもないけど、父さんは強い幸運の持ち主だったから、かえって不運になった時の反作用が物凄い。そう言えば、碧ちゃん。昨日辺りに父さんから妙な電話がなかった?」 「ん?おおあった。子育てどうやってる?って聞かれたんだが、うちは優秀な家政婦がいてな?霊撃者というよりは、霊視班タイプの霊媒だ。昨日たまたま休みだって言ったらああいい、気にするな。つって切れた」 「僕のところにも来たよ。真帆ちゃんは何してる?って。真帆ちゃんは毎月のあれが妙に重いんだよ。昨日は1日寝てた。気にすんな生理中の真帆おっぱいを労ってやれよ。うちは全然全く問題ないからな?!ってやっぱり妙な電話が」 「あれだな。今家に誰もいなくて、パパ一人で三つ子の面倒見きれなくて、ありゃあパパからのSOSってことはないか?」 シーンとなった。 「いやあまさかそれは」 「そうだよなあ?一瞬冷やっとしたぞ。わはは」 「あはは」 変な間の後で、慌てて双子は電話を方々にかけまくった。 勘解由小路降魔容疑者。生後半年の女児を死なせる。 恐ろしい予感が二人を支配していたという。
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