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目が覚めると心配そうに僕を覗き込む緑さんの顔が見えた。
「えっ?うっ…っ」
がばりと起き上がろうとして、身体中の激しい痛みに呻き声を上げた。
「穏くん、ごめん…ごめんね…。僕なんかの為に…痛かったでしょう…?」
緑さんの綺麗な瞳からはハラハラと涙が零れて落ちていく。
目元も赤く、もしかしたらずっと泣いていたのかもしれない。
「……」
『泣かないで』そんな想いで緑さんの頬に手を伸ばす。
「緑さん…」
「あーごっほん」
盛大なわざとらしい咳払いが聞こえた。
見るとさっきのα女性が僕を見下ろしていた。
僕の事を見定めるような、値踏みするようなそんな視線。
α女性は緑さんの隣りに寄り添うように立ち、自分たちがいかに親密であるかをアピールしてくる。
「うちの緑を守ってくれてありがとう」
「……いえ…」
ざわざわと心が騒ぐ中、それしか言えなかった。
やっぱり気のせいではなく、『うちの緑』とこの人は言ったんだ。
親密な様子のαとΩ。
二人は…番…?
欠陥品の僕とは違う上位のα。お似合いの二人。
この人なら緑さんの事を苦も無く守り抜くんだろうな。
全身の痛みなんかよりもっと大きくて深いふかい痛み。
やっぱり僕なんかじゃ…ダメなんだ。
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