幸せドアノッカー

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僕はαである父さんとΩである母さんが愛し合って生まれた。 14歳の時に受けた二次性判定検査では『α』となっていた。 小さい頃から夢見ていたお姫様を守る事ができるんだ。 その時はそう思って嬉しかった。 だけど、16歳になった今も身体は小さく、何事も普通。 まるでβのような自分。 それに僕には大きな欠陥があった。 αなのにΩのフェロモンが感じられないのだ。 その事に気づいたのは教室で突然訪れた異様な現象。 僕の隣りの席のΩの子が突然発情期に入ってしまったのだ。 僕以外のクラスのαたちは目の色を変えてΩの子に集まって来た。 ゾンビ映画みたいにじりじりと考える事をやめ、ただその子を求めるように。 僕は何が起こっているのか分からなかったけれど、直感的にこのままではいけないと感じた。急いで先生を呼びに行きその子は助かり大事にはならずに済んだ。 その子は僕に感謝をしていたけれど、助けたのは先生で僕じゃない。 僕は役立たずで欠陥だらけなんだ。 僕がフェロモンを感じる事が出来ていたなら僕が一番近くにいたんだし、もっと早くにその子を気遣えたかもしれない。あんな怖い思いをさせずに済んだかもしれない。 結局その子はトラウマになりΩだけの学校に転校してしまった。 ―――だからやっぱり僕はダメなαなんだ。
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