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海面に人間の死後のゼリーに似た物質が多く見かけられるようになったのだ。最初は単なる気のせい。沈めたものが浮いてきているだけ。そう思っていた。
しかしゼリーは日に日に数を増し、年を追うごとに海面を覆うようになっていった。
科学者が調査に入った、結果はあのゼリーは人間の死骸ではなく、魚の死骸である可能性が高いというものだった。人間の死骸を食べた魚が、何らかの原因で死に至ったとき、その魚もまた、ゼリー状に変化してしまう。そう結論付けられた。
人類が海洋を汚染している。連日多くのメディアが取り上げ、熱狂的に報道がなされた。このプロジェクトの先駆けである父は、その格好の矢面となった。
連日家にマスコミが押し寄せた。そして未知の段階で、このプロジェクトを推進したことへの責任を追及した。
「社会的責任」。その言葉が、父とそしてぼくの肩に重くのしかかった。
「自分は間違ってはいない」
父は自分自身をそう信じて疑わなかった。ぼくはその言葉に、特に何もなくうなずいた。
そして父は、その年、あっけなく死んだ。
「人類は海に還る」
そう信じた父の亡骸は海へと放たれた。
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