5 深入りしたい

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「薬指に指輪がないのは確認しているし、彼氏がいないというのも聞いてしまいました。俺は聞かれなかったので言ってませんけど、同じく言い訳が必要な相手はいません。……どうします?」  問いかけは、きわめてニュートラル。  千花次第。 (もう少し一緒にいたい。でも、何かあったら「一人暮らしの家に男を入れた」女が悪いことになるんじゃないかな。何かって、何? 仮に何かあっても、柿崎くんが相手なら。……彼に、私が経験がないってバレたら? 大人の女じゃないって幻滅されない? そもそも柿崎くん私に興味あるかな。不自由していなさそうだし。それは見た目で勝手に決めつけているだけか。彼女がいないっていうならいないんだろうし……)  ぐるぐると、気持ち悪くなるほど考えた。  形だけでも「何もしないよ」って言ってくれたら、建前になるのに、柿崎はそういう気休めを口にしない。  この状況では、常識的に考えて「だめ」だと思うし、覚悟もない。  それなのに、なかなか言えないのは、一緒にいたい気持ちが強すぎるせい。  あまりにも強くて。 「人生で一度だけ……、素直に人に頼っていいなら。今、柿崎くんと一緒にいたい、です」  判断力を一度、壊して止めた。  素直な気持ちだけを、口にした。
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