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返答はない。こちらをチラッと見ることもない。僕はめげずに話しかけた。
「ここって近所なの?」
返答はない。
「暑いね。汗かいたのにさっき友だちのお見舞いで病院行ったら冷房ガンガンで、それでまたバス待ってる間に汗かいちゃって風邪ひきそうだよ」
つまらない話しかでてこない自分に正直幻滅する。
君の事をなにも知らない僕は君との話題がなくて頭をフル回転させるが、ありきたりな天気の話しかもうでてこない。
どうしてこんなにも僕が話題を探しているのか分からない。
けれど君の事を知りたいという日々の気持ちが溢れているんだ。その溢れた気持ちを戻すことはできないでいた。
話題を探していると君はタオル木地のハンカチを差し出してきた。
「汗」
「え」
僕がびっくりしていると君は涼しい顔で言った。
「汗、かいてるんでしょ?」
驚いた。僕の話を聞いてくれていたのか。
僕の独り言として流されているのかと思ってたので、少し安堵と同時に君の声を初めてちゃんと聴いたなと感動している自分が気持ち悪いなと思った。
顔に似合わずハスキーな君の声に心地よさと懐かしさを感じた。
「ありがとう」
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